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THE DRIVER - Hondaと挑む新たなる挑戦 -THE DRIVER - Hondaと挑む新たなる挑戦 -

SUPER GT「鈴鹿1000km」参戦について

── SUPER GTのマシンは、F1マシンに比べてどんな印象ですか?

ジェンソン・バトン(以下、JB):たいへん良い印象です。高速コーナーでこれほどタイヤがグリップするとは思っていませんでした。マシンのバランスにはずっと苦労していましたが、それでもグリップ力が素晴らしい。走りを楽しめました。NSX-GTは馬力がおよそ600ps、F1マシンは約900ps。パワーには大きな違いがあります。ドライビングスタイルも変わってくるので、この違いに馴れるには少し時間がかかりそうです。なぜなら、スピードを極端に落としてはいけないからです。コーナーを通じてスピードを保たなければいけません。17年間の自分のドライビングスタイルとはまるで異なりますが、これも勉強。とてもエキサイティングな気持ちです。

GTマシンでの初めてのレース

── SUPER GTでの最大の困難は?

JB:マシンのフィーリングに馴れることですね。マシンバランスで言えば、僕がこれまで走ってきたF1マシンは、もっとフロントのグリップがしっかりしていました。まずは、クルマのリアルな動きに馴れることが大切だと思います。アンダーステアなF1マシンは私の好みではありませんでした。この部分では、もう少し調整する必要がありそうです。

同時に、チームメイトである2人のドライバーと力を合わせて行かなければなりません。私はゲストなので、彼らの方向性になるべく合わせるつもりです。他のドライバーと一緒に作業するのはエキサイティングです。彼らには彼らの意見があるし、私にはもう少し異なった意見があります。F1での経験を生かして、鈴鹿1000kmで成績を残したいと思います。

SUPER GTの魅力

── 長年、SUPER GTを見てきたと伺いました。また「SUPER GTは、素晴らしい」と話す友人がいるとも伺いました。SUPER GTの魅力は何でしょうか?

JB:GT500には3社の大きな自動車メーカーが参戦し、4社のタイヤメーカーが競い合っています。才能豊かなドライバーがそろっていますし、日本人ドライバーも多くとても国際的な顔ぶれです。マシンのエクステリアデザインは魅力的で、もしも私が10代でNSX-GTに乗れたとしたら、うれしくて天まで舞い上がるほど。ものすごくカッコよくて、驚くほどスタイリッシュ。NSX-GTは、世界で最もクールなレーシングカーです。

日本との関わりについて

── 日本に特別な思い出が何度もあると伺いました。ファンの熱心な応援も知っています。
これまでにどんな経験があったか、少し例を挙げてもらえますか?

JB:特別な思い出はいくつもあります。最初の思い出は、鈴鹿での出来事ですね。鈴鹿は、文句の付けどころがないコース。たしか1997年のカート大会(CIK/FIA WORLD CUP KART RACE IN JAPAN)の決勝レースで、私はトップを走っていました。しかし、チェーン切れで完走できませんでしたが、その時「アイルトン・セナ・メモリアルカップ」を受賞したんです。僕の攻撃的な走りを評価していただいた、とても特別な思い出です。

2000年からF1グランプリに出場するようになりました。鈴鹿サーキットでの走行初日、私は、S字コーナーからダンロップ・コーナーの間で苦しんでいました。その結果をデータ分析した翌日のプラクティスで、このセクションの総合トップに立ち、予選5位になりました。初の鈴鹿グランプリで、とてもうれしかったのを覚えています。この日からこのコースの虜になり、鈴鹿サーキットでのチャレンジを心から愛するようになったのです。

そして、最高の思い出といえば、2011年の日本GPでの優勝です。フェラーリのフェルナンド・アロンソ、それにレッドブルのセバスチャン・ヴェッテルが相手という三つ巴の激戦を制しました。レース終盤、私は燃料を使い果たしそうになり、燃料をセーブし始めたところで2人が追いついてきました。その結果、3人のドライバーがほんの2秒差でフィニッシュ。燃料を使い切った私はグランドスタンド前にマシンを停め、クルマから飛び降りてみんなに手を振りました。とても特別な瞬間でした。

日本の観客のみなさんは、モータースポーツを心から愛する世界でもっともアツいファンです。みなさんと会えることを、いつも楽しみにしています。ひとりひとりのドライバーやチームも素晴らしい。レースが終わっても、ファンが観客席に残ってレースのリプレイを見るのは、おそらく日本だけでしょう。だからここに戻ってきてSUPER GTに参戦できるのは、本当に特別なことです。

愛すべき日本の文化

── 東日本大震災のあとに、募金を募ったそうですね?

JB:はい、被災地を訪れて、それから宮城県のSUGOのカートサーキットに行きました。そこで家族が被災したという、約25人の子供たちと過ごしました。そこで僕はカートをドライビングしました。子供たちのドライビングを見て、言葉を交わしました。英語と日本語でできるだけコミュニケーションを図りました。みんながレースへの情熱を持ち続けていることを知る、本当に素晴らしい体験でした。子供たちにとっては、気晴らしとなるよう、身近に集中できる存在があることは大切だったようです。

── そこには、レーシングドライバーとファンの関係を越えたなにかがあったような気がします。たとえば、日本文化への共感というような。

JB:日本文化は大好きです。興味深いのは、多くのF1ドライバーも日本が好きで、日本の方々に敬意を払っているということ。これほど愛されている国は、ほかにないかもしれません。2011年がそうでしたが、厳しい状況に陥っても強さを発揮できる。たとえ心が傷ついても強く前進できるという点において、私たちはたくさんのことを日本人から学んだと思います。本当に大変な時期だったと思います。僕は日本の文化を愛しています。

日本食も大好きで、長い時間をかけて日本中を旅してきました。大都市ばかりではなく、地方の小さな街にも訪れました。広島にも行きましたね。とても楽しかったです。各地の名物も食べました。すべてが素晴らしい体験。日本のHondaとこれほど長期的に仕事ができたのは、本当に特別な体験で、一緒に多くの経験をしました。良いことも、悪いこともありました。でも、それをひとつのファミリーとして体験したのです。だから、日本のチャンピオンシップレースのために戻ってこられたことが、本当にうれしいです。

Hondaの一員であること

── Hondaと一緒にレースをすることはあなたにとって大切ですか?

JB:日本に戻り、Hondaのために日本のチャンピオンシップレースを戦うことはとても重要です。そこには、私にとってさまざまな意味があります。2003年から2008年、そして2015年から2017年まで、何シーズンにも渡り、HondaとともにF1で戦ってきました。

日本のクルマ、日本のエンジン、日本のタイヤ、そして日本のチームで、日本のファンのためにレースを戦う。これは本当にすばらしいことだと思います。とてもうれしいし、このようなチャンスを得られて本当にラッキーです。できるだけ楽しむとともに、できる限りいい成績を残すことに全力を注ぎたいと思います。

── 最近、F1経験選手が他のレースにも出るようになりました。
あなたの元チームメイトがアメリカで大きな成功を収めたことは、どう思っていますか?

JB:2人のチームメイトのことですね。佐藤琢磨とフェルナンド・アロンソは、素晴らしいと思いました。フェルナンドのおかげでたくさんの人がインディアナポリス500マイルレースを見たと思います。琢磨は、「インディ500での優勝」という素晴らしい偉業を成し遂げました。琢磨が勝ったのを見て、とてもうれしかったです。彼にとって、キャリアを変えてしまうほど、大きな意味を持つ優勝だったと思います。

── F1ドライバーには、F1にしか興味がない選手も、そうでない選手もいます。
あなたは後者ですよね?

JB:そうですね。私とフェルナンド・アロンソは同じ意見で、2人ともモータースポーツを愛しています。フェルナンドは、18歳、19歳からレースに打ち込んできましたが、私はちょっと違う。というのも私は、トライアスロンやサイクリングといった、レース以外のスポーツにも興味があるからです。その中でも、モータースポーツが私の人生の大部分を占めています。私はF1ドライバーではなく、レーシングドライバー。どんなレースであろうと全力で挑みます。だから、イエス。モータースポーツへの愛情はとても深く、どんなマシンであろうと100%の力で走ります。走るのは楽しいことですが、最高の結果を手に入れるという意味では真剣勝負です。

── つまり、(モータースポーツは)あなたの人生の一部ですね。

JB:はい。とても大きな存在です。

日本のファンへのメッセージ

── 最後にファンのみなさんへ、メッセージをお願いします。

JB:みなさんのホームカントリーでもう一度レースをするために、それも「鈴鹿1000km」を戦うために来日しました。SUPER GTに出場することを、もう何年も前から楽しみにしていました。F1の素晴らしい舞台で17年間戦い、今回、SUPER GTに参戦するチャンスを得られたことがとてもうれしいです。これまでの私のキャリアをサポートしてきてくださったすべてのみなさんに、心からお礼を申し上げます。この場所で再びレースを見ていただけるのが、なによりうれしいです。全力を尽くします。ガンバリマス。サーキットで、お目にかかれることを楽しみにしています。みなさんのために、SUPER GTの鈴鹿1000kmを最高のレースにします。

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